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食道の病気

食道の疾患のうち、代表的なものについて概説します。

逆流性食道炎/胃食道逆流症

逆流性食道炎(胃食道逆流症)とは、胃の中の胃液、特にその中に含まれる胃酸が食道に逆流してしまうことで、胸焼けや呑酸(酸っぱいものがこみあげる)などの不快な症状を感じたり、食道の粘膜がただれたり(食道炎)する病気です。胃酸が逆流する原因としては、①食道と胃の境目の筋肉(食道括約筋)がゆるみ、遺産が逆流しやすくなる②食道の動き(ぜん動運動)の低下により、胃液の逆流を胃へ押し戻せない③胃の中の圧が高くなり、胃液が押し上げられる、が挙げられます。加齢や食生活の欧米化、喫煙・飲酒などの生活習慣、肥満が要因となり、近年増加しています。胃食道逆流症は、英語(Gastro-Esophageal Reflux Disease)の頭文字をとって、GERD(ガード)とも呼ばれています。

逆流性食道炎(胃食道逆流症)の症状

主な症状は、上述した胸やけ、呑酸以外に、胸の痛み、つかえ感、長く続く咳、のどの違和感、嗄声(かすれ声)などがあります。

診断のための検査として内視鏡検査のほか、食道内圧測定検査、レントゲン検査などがありますが、基本的には内視鏡検査でおこなわれます。内視鏡で色調変化やびらんなどの炎症所見が認められれば、逆流性食道炎の診断となり、所見により程度が分類されます(ロサンゼルス分類)。症状があっても、内視鏡上炎症所見がみられない場合には「非びらん性逆流性食道炎」と診断されます。

逆流性食道炎(胃食道逆流症)の治療

治療は薬物療法が基本ですが、稀に原因となる食道裂孔ヘルニア(後述します)に対して、手術が選択される場合もあります。薬物としては以下のものが用いられます。

  • 胃酸の分泌を抑える薬(酸分泌抑制薬):プロトンポンプ阻害薬、ヒスタミンH2受容体拮抗薬
  • 食道の運動機能改善薬(消化管運動機能改善薬)
  • 食道粘膜を保護する薬(粘膜保護薬)

これらを症状に応じて、単独ないし組み合わせて投与します。一定期間の投与で症状が治まる方もいますが、薬をやめると症状が再発する方もいますので、経過により長期間の投与を要する場合もあります。

食道裂孔ヘルニア

逆流性食道炎の項で述べましたが、胃と食道のつなぎ目が緩くなってしまい、胃の内容物が食道に逆流しやすくなっている状態を指します。軽度のものがほとんどで無症状のことが多いですが、緩みがひどくなると、逆流性食道炎を生じて症状がでることがあります。あまりにも症状がひどい場合は手術が必要なことが稀にあります。

食道アカラシア

食道裂孔ヘルニアとは逆に、何らかの原因で胃と食道のつなぎ目がきつくなり、唾液や食べ物が胃の中に落ちていかず通過しにくくなるため、狭い部位より口側の食道が拡張してしまう病気です。食べ物が通りにくいため、飲食物が食道内に停滞してしまい、胸焼けや胸の痛み、つかえ感、嘔吐等の症状を引き起こします。頻度は比較的まれで(10万人に1人)、日本人より欧米人に多いとされています。発症には食習慣の違いがかかわっていると推測されています。

食道アカラシアの治療

アカラシアの診断には、上部消化管造影検査や内視鏡検査が用いられます。これらにより、狭窄の部位・程度を把握し、他の疾患除外などを行います。診断がついた後、食事を中心とする日常生活での留意点を指導し、内服薬でまずは治療しますが、効果が低いこともあり、内視鏡的な治療が必要になることがあります。

バレット食道

食道と胃の粘膜の細胞は異なりますが、胃から食道に胃酸の逆流が長期間にわたって続く(逆流性食道炎)ことにより、胃に近い食道下部の粘膜(扁平上皮)が胃の粘膜(円柱上皮)に近い粘膜に置き換わります。この状態がバレット粘膜で、食道の全周性に拡がり、3cm以上の長さになっているものをバレット食道、それ以外のものをSSBE(Short Segment Barrett’s Esophagus)と呼んでいます。バレット食道は食道腺癌(バレット腺癌)の前癌状態と考えられており、欧米の白人で増加している疾患です。欧米人はバレット食道の範囲が広く、バレット腺癌のリスクが高いとされています。日本における食道癌は扁平上皮癌が多く、またSSBEが多いためバレット腺癌は少ないのですが、今後食生活の欧米化や高齢化が進むに従い増加すると考えられています。SSBEは、バレット食道に比べリスクは低いと考えられていますので過剰な心配はいりませんが、定期的な内視鏡検査を受ける必要性はあると考えます。

バレット食道の治療

薬物治療は逆流性食道炎同様、胃酸分泌抑制薬の投与が主体となります。癌の発生予防には、バレット粘膜や腸上皮化生を除去し、再び正常な扁平上皮に戻すことが行われます。この目的で行われている内視鏡的処置や手術に関しては、未だ一定の見解が得られていません。

食道がん

近年のわが国における食道がんによる死亡者は毎年10,000人を超えており、厚生労働省の人口動態調査によると、2020年は全国で10,981人、男性が多く(81.8%)を占めています。年齢は60~70歳代に好発(全体の約70%)し、飲酒と喫煙が最も重要な危険因子とされています。とくに飲酒の影響は大きく、顔がすぐに真っ赤になる体質の人がアルコールを大量に飲むほど、アルコール濃度が高い酒を飲むほど、発癌の危険性は高まります。

食道癌は、早い段階(食道粘膜の表層までの浸潤)で見つかり治療を受ければ、5年生存率は75%以上ですが、最も病状が進行した場合は、5年生存率は約20%しかありません。最近の統計では、食道がん全体で5年生存率は37%であり、同じ消化管のがんである胃がんは65%、大腸がんは70%であることに比べて、予後が著しく悪いことがわかります。壁が薄く外膜がない食道に発生したがんは周囲に浸潤しやすく、周囲には肺・大動脈・心臓・気管といった重要臓器が存在しています。このため、早期に発見しないと、治療するうえで困難さを引き起こします。つまり、食道がんは、病状が進行するのが速く、なおかつ、進行した場合には治療することが大変難しいがんであると言えます。

食道がんの検査

胸が詰まる感じ、しみる感じ、飲み込みにくいなどがきっかけで内視鏡検査を行い、発見されることもありますが、初期は全く症状がないため、健診などをきっかけに偶然見つかることもあります。ただしバリウムによる透視検査では早期発見は困難なことが多く、内視鏡検査によってのみ、治癒が可能な早期のがんを発見できることがほとんどです。

食道がんの治療

食道がんの病期(病気の進行度、広がり)は、Stage 0~IVに分けられ、この病期に従って治療方針を決定します。がんが発見された場合には、全身検査のために造影CT検査やPET検査などを行い、病期を診断します。食道がんに対して行う治療は、その病期に基づいて、内視鏡的切除、外科手術、化学療法、放射線療法と多様な治療法があります。早期に発見できれば内視鏡による治療も可能です。

食道がんの早期発見のためには、定期的に内視鏡検査を受けることが望ましいと思われます。とりわけ、飲酒と喫煙の二大危険因子を保有している方は、積極的に受けるべきと考えます。

食道カンジダ症

カンジダとは、真菌と呼ばれるいわゆるカビで、人間の皮膚などに住み着いている常在菌の一つです。カビですので湿った環境を好み、口の中や食道の粘膜などはカンジダが繁殖しやすい場所になります。健康な人でも、内視鏡検査の際に食道に白い粉チーズのようなものが見えることがあり、これがカンジダであることが多いのですが、特に症状を有さず治療も不要な場合がほとんどです。ただし、免疫力が低下した状態になるとカンジダが増殖し、食道に炎症を起こして、症状をもたらすことがあります。こうした場合には、抗真菌薬等をつかって治療をすることがあります。

マロリーワイス症候群

繰り返す激しい嘔吐のために食道に圧が加わり、胃と食道のつなぎ目の部分の粘膜の表面が裂けてしまい、出血してしまう病気です。飲酒による嘔吐が関与する割合がおよそ半数で、飲酒後に生じることが多く、このため圧倒的に男性に多いという特徴があります。この他には、頻回に嘔吐につながるような状態(食中毒、乗り物酔い、つわりなど)でも起きることが知られています。

ほとんどの場合は自然に止まりますが、大量出血した場合には、吐血や下血が出現し、まれにショック状態で救急搬送されることもあります。出血の程度によっては、緊急内視鏡検査で止血を行ったり、輸血が必要となったりすることもあります。

食道静脈瘤

肝硬変症などの疾患が原因で生じる門脈圧亢進症のため、食道の静脈内への血流が増えてうっ血することにより血管内の圧力が高まり、静脈が膨れてしまった状態を指します。携帯、色調や随伴する発赤所見などの内視鏡的所見により、破綻して出血する(破裂)危険性が異なります。一旦破裂してしまうと、生命にかかわる状態に陥る危険性が高いため、存在診断及び破裂予防の処置が重要な疾患です。

食道静脈瘤の症状

症状は破裂しない限り、ほとんどありません。破裂してしまった場合には、吐血や黒色便の出現や、血圧低下に伴うめまいやふらつきなどが現れます。

食道静脈瘤の治療

破裂の危険性がある静脈瘤に対する予防的処置や、出血時の緊急処置として、内視鏡を用いた手段が広く行われています。すなわち硬化剤を注入する内視鏡的硬化療法及びゴムバンド(O-リング)を用いて、静脈瘤を機械的に縛ってしまう内視鏡的静脈瘤結紮術です。また門脈圧を低下させる作用を有する薬剤(バソプレシン、β遮断薬など)を投与する場合もあります。

 予防的に治療を受けた方に比べて、出血後に止血処置を受けた方の予後は、一般的に不良とされています。理由としては、基礎疾患として肝硬変症を有する方が大半であるため、出血を契機に肝不全などの状態に陥ってしまったりするからです。したがって、進行した慢性肝疾患、特に肝硬変症と診断された方は、定期的に内視鏡検査を受けて、静脈瘤の有無や状態を把握してもらい、破裂の危険性が高い場合は予防的に治療を受けることが重要です。

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