第55回「慢性腎臓病と生活習慣」

2016/02/02

第55回 生活習慣病教室 「慢性腎臓病と生活習慣」

■日 時:平成28年1月19日(火)
     14時半~15時半

■場 所:牛久愛和総合病院
     B館2階大ホール

■講 師:腎臓内科 内藤 誠 医師

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腎臓とは

腎臓は腰の上あたりに位置し、脂肪に覆われて左右に一つずつあります。そら豆のような形をしており大きさは拳ぐらいで、成人で一つ約150g位の重さです。
また、腎臓では1分間に約1.5lの血液が流れ込み、その血液がろ過され尿が作られています。作られた尿は尿管、膀胱を通って体外へ排出されます。その他にも、腎臓は多くの働きを担っています。

腎臓の働き

  1. 体内で発生した毒素を排出する
  2. さまざまある臓器の中で、腎臓はたくさんの血液が流れ込む臓器です。血液中の老廃物を除去し、尿を作り、体外へ排出します。

  3. 体液量の調節
  4. 体液とは、体内にある水分の総称で、腎臓は体内の水分量のコントロールを担っています。腎臓の働きが悪くなると尿の量が減り、体にむくみが出てきます。手足のむくみは生命に大きな影響はありませんが、心臓や肺にむくみが溜まると息が苦しくなります。

  5. アルカリ性と酸性の調節
  6. 毒素の多くは酸性で、体に溜まったそれらを中和させて弱アルカリ性に保とうと腎臓が作用します。酸性とアルカリ性のバランスを取ることで、色々な臓器の働きを支えており、腎臓はいわば縁の下の力持ちのような働きをしています。

  7. 電解質の調節(リン、マグネシウム、カルシウム、カリウム等)
  8. 塩分を沢山摂り過ぎると体がむくみますが、その際に体内のナトリウム量の調節を行っています。また、生野菜や果物に沢山含まれているカリウムですが、摂り過ぎると体内に溜まり、突然心臓で不整脈を起こすことがあります。腎臓病の方でカリウムが体内に溜まると最悪の場合、心停止してしまうこともあります。このような危険な状態を防ぐ為に、体内量を調節しています。

  9. 血圧の調節
  10. 血圧が高いときには、塩分と水分の排出量を増やすことで血圧を下げ、低いときには、塩分と水分の排出を抑えて血圧を上げています。また、血圧を維持する為にレニンというホルモンを分泌して調節しています。

  11. 骨の代謝
  12. 腎臓は、カルシウムを体内に吸収させる際に必要な活性型ビタミンDの生成を行っています。腎臓の機能が悪くなると活性型ビタミンDが低下してカルシウムが吸収されにくくなり、骨が弱くなってしまいます。また、血液中のカルシウム濃度が下がると体は血中のカルシウムを溶かして、濃度を維持しようとします。その為、腎臓病が進むと骨の代謝異常が出て、骨がスカスカになってしまうのです。

  13. 血液を作るホルモンの分泌
  14. エリスロポエチンと呼ばれるホルモンを分泌して、赤血球を作るよう骨髄に働きかけます。その為、腎臓機能が低下すると貧血になりやすいのです。

慢性腎臓病とは

以下のいずれかに該当すると、慢性腎臓病であるといわれています。

  1. 尿の異常
  2. 尿の中にたんぱくが出たり、血尿が3ヶ月以上続く 
    ※日本では230万人いる
  3. 糸球体ろ過量
  4. 糸球体ろ過量60ml以下が3ヶ月以上続く
    (正常の方であれば、糸球体ろ過量は1分間に100ml程)
    ※日本では1100万人いる

尿たんぱくが出ていると、男性は正常の方の2倍、女性は4倍病気にかかりやすくなります。さらに、尿たんぱくがあるもしくは、糸球体ろ過量が落ちている方は、正常の方の4~8倍血管の疾患(脳卒中や心筋梗塞)を起こしやすいと言われています。

腎臓機能の評価の仕方

健康診断の血液検査の項目において、BUN(尿素窒素)とCRE(クレアチニン)が腎臓機能が正常かどうかを判断する指標となります。

BUN(尿素窒素)は、腎臓でろ過されて尿中に排出されます。腎機能が低下してろ過しきれなくなった分が血液中に残り、数値が上昇します。
※BUNの正常値 8~21(mg/dl)

CRE(クレアチニン)は、たんぱく質の代謝産物で通常尿として排出されます。これが血液の中にどれだけ溜まっているかを見ることで、腎臓機能を推し量ることができます。
※CREの正常値 男性0.6~1.1(mg/dl) 女性0.4~0.8(mg/dl)

慢性腎臓病の危険因子と生活習慣

<腎臓病の危険因子>

  • 高血圧
  • 糖尿病
    血液の中に長時間糖が留まっていると、血管を傷つけ、それが動脈硬化に繋がって腎臓病の原因となる
  • 脂質異常症(高脂血症)
    健康診断で見る総コレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪のこと 動脈の壁にどんどん脂が溜まっていくために起こる
  • メタボリックシンドローム(肥満)
  • 喫煙
  • 腎毒性のある薬物(ロキソニンやバファリン)

これらは、以下のような生活習慣によって引き起こされます。

  • 塩分やカロリーの過剰摂取
  • 運動不足
  • 飲酒、喫煙
  • ストレス

このような生活習慣を継続していくと...
血液の中が常に糖で満たされている状態になる→動脈硬化が進む→血糖・コレステロール値が高くなる→慢性腎臓病が進む→たんぱく尿が出る→脳卒中、心筋梗塞を発症

このように最終的には、脳や心臓といった非常に重要な血管にいろいろな障害が起こってきます。

慢性腎臓病の代表的な疾患

大きく分けて6つあります。

1.慢性糸球体腎炎

BUNとCREは正常値なのに、尿潜血やたんぱく尿が健康診断で指摘されるパターン。自覚症状はほとんどない。慢性的にじわじわ進行していくと血圧が高くなったり、体のむくみが出てくる。場合によっては、10年くらいで人工透析が必要な状態になってしまう。

2.ネフローゼ症候群

尿たんぱくの量が非常に多くなる状態。正常な場合の排出量は、1日0.15g以下だが、3.5gを超えてしまうのである。他にも高コレステロール血症や血液がドロドロになって血管が詰まりやすくなる等、色々な症状が起きてくる。

3.急速進行性糸球体腎炎

非常に腎機能の悪化が速く、命に直結するような病気。人によっては数週間、数か月で末期の腎臓病になってしまう。自分の抗体を破壊してしまう自己免疫異常により、腎臓が攻撃を受けて急速に進行してしまうためである。合併症もあり、特に怖いのが肺出血。

4.腎硬化症

比較的多い病気。長年の高血圧症や動脈硬化で腎臓の血管がどんどん固くなり、それと共に心臓の機能が落ちてくる。最終的に腎不全となる方もいる。時間をかけて動脈硬化が進行する性質のため、高齢の方に多い。

5.多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん)

腎嚢胞と呼ばれる水の入った袋(正常な人でも小さい嚢胞はある)が、どんどん腎臓に出来てしまう。腎臓構造の異常で、遺伝性疾患である。主に超音波検査で発見されることが多い。人によっては30・40代で末期腎不全に移行してしまう。どんどん大きくなるとお腹が張り、ほかの臓器を圧迫する。水の入った袋の中で出血を起こしたり、感染を起こしたりすることもある。日本には約3万人の患者がいる。

6.糖尿病性腎症

透析が必要となる病気の第1位で、透析患者全体の半数を占めている。糖尿病の三大合併症の一つ。まず、神経が障害されて手先・足先がピリピリしびれてくる→次に目の中の細い血管が侵されて網膜症になる→最後が糖尿病性腎症である。糖尿病を発症後、およそ10年で糖尿病性腎症が発症してくると言われている。特に血糖コントロールの悪い方に起きやすい。

腎臓の機能が全滅してしまうと、人工透析を受けなければなりません。通常四六時中働いてくれている腎臓の代わりに、人工の腎臓に繋いで、血液を洗って戻す治療法です。おおよそ週3回、3~4時間ほど行います。日本では約30万人が人工透析を受けています。

慢性腎臓病の予防

血圧や血糖に気を付けることが腎臓を保護することになり、慢性腎臓病を防ぐことに繋がります。その他にも予防策はたくさんあります。出来ることから始め、継続して健康な体を目指しましょう!

  • 定期的に健康診断を受ける
    (早期に尿たんぱくの異常等を見つけることが出来る)
  • たんぱく尿等の尿の異常を指摘されたら、放っておかずに受診をする
  • 高血圧、糖尿病、脂質異常症などの持病を持っている方は、しっかり治療を受けて、少しでも腎臓の機能が落ちる速度を自然な形に近づける
  • バランスのよい食事(塩分は1日6gが望ましい)
  • 適度な運動
  • 生活習慣の改善
  • 過度な疲労(ストレス)を溜めない
  • 規則正しい生活