第51回「脂質異常症と心臓病」

2015/06/08

第51回 生活習慣病教室 「脂質異常症と心臓病」

■日 時:平成27年5月19日(火)
     14時半~15時半

■場 所:牛久愛和総合病院
     B館2階大ホール

■講 師:循環器科  阿部 正宏 医師
         

欧米化する日本人の食生活

近年食事面において欧米化が進み、以前と比べて炭水化物が減り、乳製品・脂肪・肉類・卵が増えるという食生活に変化してきています。中でも、脂肪が増えたことでコレステロール値の上昇をもたらしたと言われています。

また、油を摂ることはカロリーオーバーにもなってしまう為、欧米化の食事は日本人の体形や病気をも変えてきています。
しかし、その一方で、以前よりも男女ともに平均寿命が延びてきていることも事実です。
これは、欧米化の食事によって栄養が豊かになったことが要因です。
その為、一概に欧米化の食事がいけないというわけではありません。

コレステロールとは

コレステロールとは脂質の一つで、もともと私たちの体の中にある成分です。
大半は食事から摂取するイメージが強いですが、実は体内のコレステロールの7割は肝臓で作られています。
作られたコレステロールは、細胞膜を補強する成分に用いられたり、消化吸収に必要な胆汁酸という消化酵素の原料として使われる為、値が低いと細胞膜などがボロボロになり、寿命が縮んでしまうのです。

コレステロールにはHDL(善玉)コレステロールとLDL(悪玉)コレステロールがあります。
HDLコレステロールには、血管に溜まろうとしている余分なコレステロールを肝臓へ運ぶ働きを持っています。

通常、食べ物や肝臓で構成された過剰なコレステロールは、便として排出されますが、排出される前に血管の中で滞ってしまうと血液の流れを妨げ、動脈硬化を引き起こす原因になります。
HDLコレステロールには、それを防ぐ働きがあるのです。
LDLコレステロールは、体の各所へ必要なコレステロールを血液によって運ぶ働きをしています。つまり、コレステロールは私たちにとって非常に大事なものなのです。

コレステロールと栄養

コレステロールは栄養と大きく関係しています。「コレステロールは低い方が良い」と思われがちですが、病気の方を除いては、そうではありません。上記で述べたように、コレステロールは私たちが生きていく上で必要な栄養なのです。

<コレステロールが低い場合>
栄養状態が良くない=免疫力が落ちている⇒死亡率が上がる
※がん患者は体内でコレステロールを作ることが出来ないので、非常にコレステロール値が低い

<コレステロールが高い場合>
心臓病等にかかりやすくなる⇒それらによる死亡率が高くなる

疾病の質は違いますが、値が高すぎても低すぎても良くありません。適当な量を摂ることが望ましいのです。


コレステロールと食事

「たまごはコレステロールが高いから1日1個まで」というようなことを耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。もちろん大量に摂取するとカロリーオーバーになり、コレステロール値は高くなってしまいます。

しかし、過剰に摂取されたコレステロールは便として排出されるので、ここ数年において「必要以上に摂取制限をしなくてもよいのではないか」という流れが出てきているのです。
その為、たまごは1日に1~2個食べても特に問題はないとされています。

コレステロールを多く含む食物を食べたからといって必ずしも高コレステロール血症になるというわけではありません。また、コレステロールが高いと動脈硬化が進むと思われがちですが、単にコレステロール値が高いだけでは一概にそうとは言いきれません。
それらの他にたくさんの危険因子を持っていると、動脈硬化が進んで心筋梗塞や脳梗塞といった病気にかかりやすくなる危険があるのです。

食事によるコレステロールの摂取よりも、どのような危険因子を持ち合わせているかが病気を患うか否かにおいて重要になってくるのです。

例外として、コレステロールが200以上あれば危険因子がなくとも、これ単独で心筋梗塞等を起こす危険はあります。

※危険因子...喫煙、糖尿病や高血圧がある、高齢である

年齢・性とコレステロール

男女ともに年齢を重ねていくと、コレステロール値は上がる傾向にあります。
特に、女性は閉経後に急激に上がります。これは、生理を起こすホルモンに、コレステロールの合成を抑える働きがあり、閉経することでそのホルモンがなくなってしまうのが原因です。

また、妊娠中は胎児を育てる為に、多くの脂肪を必要とします。
それにより、脂肪とコレステロールが増えやすくなり、脂質異常が見られることもあります。

男性の場合、20代から加齢と共に数値は上昇していきますが、50代を過ぎた頃から次第に栄養がうまく吸収できなくなり、徐々に低くなる傾向も見られます。

治療法について

食事療法 

  • カロリーを摂り過ぎない
  • カロリーの半分は糖質(炭水化物や穀物)で摂る
  • 炭水化物は夜に摂り過ぎない
  • 食物繊維を含む食品を積極的に摂る
  • 油を摂り過ぎない(摂る際は、オリーブオイル等の植物油や青魚が良い)

あくまでも、コレステロールを多く含むものを食べないのではなく、カロリーオーバーにならないように注意するということがポイントです。

運動療法 

  • ウォーキング等の有酸素運動
    (運動はHDLコレステロールを増やすと言われている)

それらを行っても十分に効果が見られない場合、薬物療法を取り入れます。

数値が基準値を超えたから、すぐに治療を始めましょう!というわけではありません。
危険因子を加味して、一人一人の体に合った方法を医者が考えていかなければならない時代になっているのです。